会社の定期健診や人間ドックで乳腺エコー(超音波)を受けた際に、最も多い結果が「嚢胞あり。経過観察してください」と記載されるパターンです。
多くの方は「嚢胞って何?腫瘍?がんじゃないの?」と思われるでしょうが、健診センターでは医師からの説明はないため、不安を感じられると思います。
嚢胞は乳がん検診で最もよく見られる良性の腫瘍であり、女性ホルモンに反応してできた「液体の袋(水風船)」です。下のイラストの青い丸のように、乳管という母乳の通り道にできます。
腫瘍であることは事実ですが、心配のいらない放置可能な良性腫瘍であり、実は数ミリの嚢胞であれば誰でも1つか2つこっそり隠れていることが多いです。
そして、嚢胞に関して一番重要なことは、「乳がんに変わったりはしない」ということです。
嚢胞は女性ホルモンに反応して大きくなったり小さくなったり、新たにできたり消えたりしていますが、どれだけ大きくなっても、どれだけ数が増えても乳がんに変身したりはしません。
嚢胞は女性ホルモンに反応してできる以上、20代から閉経前後までの幅広い年齢の方に見られますが、閉経後数年経つと自然に消えていくことが大半です。なので、嚢胞ができたからといって何かに気をつけたり、予防を意識する必要はありません。
あまり大きくなりすぎると、しこりとしてコロコロ触れたり、突っ張ったような痛みを感じることがありますが、その場合は注射針を刺して中の液体を抜く処置をする場合もあります。(当院でも月に2~3人程度は外来でこの処置をしています)
低用量ピルやホルモン製剤を内服している方は、副作用で嚢胞がたくさんできてしまうことがあります。
女性ホルモンが体内で増えることで、乳腺および乳管に対しても女性ホルモンが多く作用してしまうことで嚢胞ができてしまいますが、あまり嚢胞が増えすぎてしまうと乳がん検診の精度が落ちてしまう(本当の乳がんができた場合に嚢胞に紛れてしまい見つけにくくなる)可能性がありますので、服用を続けても問題ないかは医師の判断が必要です。
エコーでの嚢胞と乳がんの写り方の違いは、下の画像を見てもらえば一目瞭然です。
嚢胞は真っ黒で丸い形をして、輪郭がはっきりしています。対して、乳がんはいびつな形をしており、輪郭もなぞりにくいのが特徴です。なぜこのような違いが表れるかというと、乳がんは周りの正常な乳腺に癒着して栄養を奪い取りながら不規則に成長していくからです。
最後にまとめますと、「嚢胞=水風船=良性腫瘍=乳がんには変わらない」です。
ただし、本当に嚢胞で間違いないのか?に関しては、乳腺の専門医でないと判断がつきにくい部分もあります。健診センターでは乳腺の専門医ではなく検査技師さんが最終判定をしている施設も多いため、本当に嚢胞で間違いないのか確認されたい場合は、当院を受診していただければと思います。