症状・疾患

胸にしこりがある

20代・30代の方であれば正常な乳腺の一部をしこりのように触れてしまっていて、検査をしてみると結果的には何もないことが大半です。実際にしこり(腫瘍)ができている場合でも、のう胞や線維腺腫といった良性腫瘍のことが大半です。良性腫瘍はある日突然乳がんに変わったりすることはありませんので、胸の形が変わるほど大きくなったり、痛みを出したりしない限りは特に治療せずに様子をみていて問題ありません。良性腫瘍の多くは閉経すれば自然と消えていきます。
ただし、これらは全て乳腺専門クリニックでちゃんと検査をした上で分かることであり、40歳未満で乳がんを発症される患者様もいらっしゃるのが事実です。なので、「しこりかも?」と思ったらまずは当院にご相談頂き、現在の乳房の状態をしっかりチェックさせて頂けると幸いです。
次に、40代以上の方の場合は、胸にしこりを自覚した場合は要注意です。多くは良性腫瘍ですが、統計学的に乳がんは40代から増え始めるがんです。マンモグラフィとエコーを組み合わせて検査を行い、本当にしこり(腫瘍)があるのか?しこりがあるのであれば、それが良性なのか悪性なのか?を判断する必要があります。当院にはマンモグラフィとエコーそれぞれに専門の女性技師がおり、検査結果は乳腺専門医の院長が当日ご説明します。

胸に痛みがある

「乳がんは痛くない」というのは一般の方々にも広く言われていますが、確かにその通りで、痛みがきっかけで発見される乳がんは稀です。乳がんを何年も放置して大きくなって、乳房の皮膚を突き破りかける程になれば痛みは出ますが、小さな早期乳がんであれば痛みを伴うことはほぼなく、実際に早期乳がんが見つかるきっかけは「検診」と「しこりを自覚」の2つが多いです。
胸の痛みの原因としては、正常な乳腺が一時的に張っているだけや、乳房とは関係のない肋間神経痛などの整形外科の病気が隠れていることが多いです。乳腺の一時的な張りであれば、痛みに波があって、2週間以内に自然と治まってくことが多いので、特に治療は必要ありません。
ただし、これらも検査をしてみないとはっきりとしたことは分かりません。
当院ではマンモグラフィとエコー以外にも、胸のレントゲンや心電図まで含めて総合的に検査ができるため、胸の痛みでどこを受診したらよいのか分からない場合は、まずは当院にご相談下さい。

乳頭から分泌物が出る

女性の乳腺(母乳を作る組織)は、授乳中でなくても女性ホルモンに反応してわずかに分泌物を作っています。なので、ふとした時に、白・透明・薄い黄色の分泌物が乳頭から出ていて下着に付いていても特に問題はありません。しかし、分泌物の色が赤や茶色の場合は乳がんが隠れている可能性があるので、検査をする必要があります。
当院ではマンモグラフィとエコーだけでなく、分泌物の細胞を病理医に顕微鏡で観察してもらう精密検査まで行っています。

乳腺症

乳房の痛みの原因の9割がこの乳腺症です。乳腺症というのは、女性ホルモンのアンバランスなどに反応して、正常な乳腺の一部分だけが張りすぎてしまった状態です。乳腺が一部分だけ張って硬くなっているため、しこりのように触れてしまうこともあります。ただし、これはあくまでも生理現象に伴う乳房の一時的な変化であって、実際に何かしこり(腫瘍)ができているわけではないため、病気ではありません。平均して2週間で自然と治まっていきます。
乳腺症は20代・30代の女性の多くが一度は経験されていると思います。「生理前の胸の張り・痛みがずっと続いている。今まではこのようなことがなかった。」という方の大半がこの乳腺症です。
乳腺症は乳がんに変化したりしないのでご安心ください。痛みも基本的には時間が解決しますが、痛みが強くて日常生活に支障が出ている場合は、胸の張りを和らげる漢方を処方することもあります。

乳腺炎

皮膚の常在菌(細菌)が乳房の毛穴や乳頭から侵入して、乳房の中で感染を起こしてしまった状態が乳腺炎です。顔にできるニキビと同じイメージで、赤く腫れてジンジン痛む場合は乳腺炎です。乳房の奥深くで感染を起こしてしまうと膿が貯まってしまい、自然に治るのが難しくなります。
細菌の感染なので、抗生剤を内服すれば治ることが多いですが、悪化した場合は切開排膿といった外科的な処置が必要なこともあります。

のう胞

乳房の良性腫瘍の中で一番多いのが「のう胞」です。母乳の通り道(乳管)の一部が風船のように拡張していて、そこに水が溜まっているだけなので、あくまでも自身の乳腺の一部であり、本当の意味での腫瘍ではありません。
乳がん検診でエコーを行うと、20代・30代の女性の多くに数ミリののう胞がいくつか見つかります。もちろん乳がんに変化したりしませんし、時間が経てば大半は自然に消えていきますので、検診でのう胞を指摘されたことがあっても全く気にする必要はありません。

線維腺腫(せんいせんしゅ)

乳房の良性腫瘍の中で二番目に多いのが「線維腺腫」です。のう胞と一緒で、乳がんに変化することはなく、自然と消えていくため特に治療は必要ありません。ただし、女性ホルモンに反応して大きくなる可能性があり、3cmを超えた線維腺腫は急速に大きくなっていくという不思議な特徴があるため、手術が必要な場合もあります。
線維腺腫が見つかった場合は、半年から一年に一回の検診で大きさを観察していき、変化がなければ放置、3cmを超えた場合は傷が小さくて済むうちに手術できれいに切除するという考え方が一般的です。

葉状腫瘍(ようじょうしゅよう)

線維腺腫と似た良性腫瘍です。しかし、線維腺腫は大半が自然と消えていきますが、葉状腫瘍は10cmにも20cmにも大きくなる一方です。そして、葉状腫瘍の90%以上は良性ですが、数%は悪性、つまり特殊な乳がんです。なので、葉状腫瘍と診断された場合は原則として手術による切除が勧められています。

*下線部は「日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン」より
http://jbcs.gr.jp/guidline/2018/index/

乳管内乳頭腫(にゅうかんないにゅうとうしゅ)

 乳房にできる良性腫瘍の一つですが、発生したばかりのステージ0 の早期乳がんと形が似ているため、区別するのがやっかいな良性腫瘍です。乳管内乳頭腫であれば良性なので特に治療は必要ありませんが、ステージ0の早期乳がんであれば、すぐに手術を行えば95%以上の方が根治します。
マンモグラフィとエコーだけでは区別するのが難しいため、当院では生検まで行って、腫瘍の一部を採取して細胞レベルで診断をはっきりさせています。

*下線部は「日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン」より
http://jbcs.gr.jp/guidline/2018/index/

石灰化

石灰化とは、読んで字の如く、微小な「石」が乳房内にできることです。石灰化自体がしこりとして触れることや痛みを出すことはないため、検査をして初めて石灰化の存在が分かります。
乳腺の石灰化には良性の石灰化と悪性の石灰化の二種類があります。良性の石灰化とは、乳房内の細い血管が硬くなっていたり、乳腺の細胞が加齢に伴って古くなって固まったものです。これらは乳がんとは関係のない生理現象の一つとしての石灰化なので、気にする必要はありません。
悪性の石灰化とは、乳がんに伴う石灰化です。乳がんは周囲の正常な細胞から栄養を奪い取りながら増殖していますが、これによって殺されてしまった正常な細胞の死骸が石のように硬くなったものが「悪性の石灰化」です。
石灰化はエコーでは写らないことが多く、良性の石灰化と悪性の石灰化の区別もマンモグラフィでしか分からないため、マンモグラフィは乳がん検診の柱となる大事な検査です。